市政質問

 市政全般に対する代表質問・一般質問は、六日、七日、十日の三日間行われ、各会派より十名の議員が、市長の政治姿勢、新年度予算、自治体合併、教育行政、福祉施策、観光行政などについて、市の考え方をただしました。
 主な質問と答弁の一部についての要旨は、次のとおりです。


合併 周辺自治体への働きかけを
[問]地方分権の受け皿としての自治体の規模、行政運営の効率性と財政力の強化、行政サービスの向上、都市機能の充実と都市のイメージのアップ等々の観点からも自治体の合併を促進する必要性を痛感するところであります。
 また、二月定例県議会で、知事は県内市町村合併について、合併論議を進めるエリアを示し、地域の自主的活動の機運を高める考えを明らかにしております。
 そこで本市は、周辺自治体との合併にどう考え取り組もうとしているのか、本市のアクションこそが決め手と思われます。
 周辺自治体の首長の皆様にどう働きかけをしようとしているのかお伺いいたします。

[答]行政をとりまく諸環境も大きく変わり、一層広域化の傾向にあります。
 こうした社会的・時代的背景の中で、国・県・市町村を問わず、行政運営のあり方も、合併が今日的課題となってまいりました。
 このような中で、十二月議会におきまして、私は、二十一世紀に夢をつなぐ新甲府市総合計画の中で、中核市構想を位置づけさせて頂きました。
 これを契機としまして、盆地の一帯的発展を視野に入れ、周辺市町村との交流連携を深める中で、住民レベルにおいても合併の趣旨、メリットなどの議論をもっていただきたいと考えております。また先般、知事が表明されておりました、合併のためのシンポジウム等にも積極的に参加し、さらに真に住民福祉に役立つための合併の議論を深めてまいりたいと考えております。


広域行政 窓口業務の広域化など具体的な推進を
[問]広域行政の推進について、行政が発信する政策情報の相互交流に向けて、早急に着手することを提案します。
 甲府市民の生活圏は明らかに近隣町村及び盆地全体に広がっており、甲府市広報にも、近隣町村からの必要な行政情報が掲載されて当然です。圏域町村との共同編集による、政策広報誌の出版も視野に入れていただきたい。
 また、窓口事務の広域化について、住民に直接かかわる各種証明の発行、住民票の取り扱いなども、圏域ごとの窓口でも取得できるよう調整すべきです。
 市長は「近未来の中核市を目指し、全庁挙げてこれに取り組む」と表明しています。各部局は、それぞれの分野の所管事業を通じて、出来得るところから行動に移すべきだと思うが。

[答]中核市構想を推進する視点からも近隣町村はもとより、盆地の一帯的な発展を視野に入れた政策展開が必要であると認識しております。
 広報の本年一月号においても、「広域行政の推進について」特集を組み、圏域二十町村に配布し広域行政の必要性や利点をアピールしたところであります。今後は現在機能している峡中地区広報研究会などへも問題提起をし、更に関係市町村とも十分話し合い、住民にとって行政域を越えて役に立つ情報の掲載を相互に行う機会や方途を検討し、住民レベルでの一体感を醸成して参ります。
 また、甲府地区広域行政事務組合においても、広域広報誌の発刊事業について研究課題として取り上げるということですので、これらも視野に入れて対応して参る考えです。
 次に、広域的な住民票等の交付サービスについては、甲府地区広域行政事務組合の構成町を中心にした近隣町村を対象に、その実施に向けて調査、研究してまいる考えであります。
 国においても、全国的な住民基本台帳ネットワークシステムを構築すべく検討を重ねているところでありますので、様々な整合性も考慮に入れながら進めてまいりたいと考えております。


合併 準備室を設置取り組みを
[問]合併については、周辺町村においてもその気運が高まってきておりますことは、青年会議所の調査等でも明らかになっております。
 市は、合併へ向けての準備室を設置し具体的に取り組まれてはどうかと思うが。

[答]合併は何といっても住民の関心や住民の理解が前提となり、気運が高まってこそ、その推進への道が開かれてくるものと考えております。
 また、行政においても大いに論議する中で、合併の意義や合併によって、より可能となる住民福祉の増進について明らかにする必要があります。このため、新年度、政策研究室を中心に県の指導もいただく中で、これら具体的な方策等を調査、研究してまいりたいと存じます。


市街化区域の拡大を
[問]市街化区域と調整区域の見直しについては、周辺町村等へのドーナツ化対策としても、高齢化する農業従事者の要望の強さからも、本市の長年の懸案であります。
 私共の居住する甲運地区においては、ファッション工業団地の進出、英和短期大学の完成、さらには、計画中の山梨学院大学陸上競技場、野球場等の用地確保を含め、農地の減少は著しい規模になることが予測されます。
 現在、農業に従事している人々も年々価格の下がるブドウ栽培の限界や高齢化に不安をつのらせ、以前から市街化区域への編入を期待してきたところであります。
 一定の条件の整った地域の市街化編入に前向きに取り組んでいただきたいと思うが。

[答]市街化調整区域を市街化区域に編入する条件としては、市街化区域に隣接し、その区域規模が五ヘクタール以上で、土地区画整理事業等の面的な都市整備が確実であれば、甲府都市計画区域内で一定面積までは随時編入することが可能であります。ご要望の区域においても、これらの条件に適合すれば可能となります。


中学校給食 業者委託方式に問題はないか
[問]中学校完全給食事業として実施のための予算、四千百五十七万円が予算計上されております。提示された方式は、「民間業者委託の弁当方式」です。
 この方式について、第一に子供の健康に責任を負うべき行政の「給食の安全、衛生」の責任放棄につながらないか。第二に利潤追求の民間業者に委託すれば、安上がりの加工・冷凍食品の多用、給食の教育的効果がそこなわれる等の重大な問題があると考えます。また、温かいもの、汁物、カレー等の要求にどう答えていくのか。最もコストのかからない外注方式の採用について、教育にコスト論は適用するものではないとの考えを持っています。したがって将来は理想的な自校方式に切り替えられるよう、また業者選択に当たっては一校一社とし、より自校に近づけるよう望むとともに多くの父母が一日でも早く給食を実施することを望んでいる状況の中では、より早く全校実施することが先決と考えていますが。

[答]長年の懸案でありました中学校給食については、市議会をはじめ関係各位のご協力をいただく中で、本年九月から業務委託方式で実施してまいります。
 給食の安全等については、文部省から示されております「学校環境衛生基準」に基づき、適切な衛生管理等に努めるとともに、民間委託に係る幾つかの問題につきましても行政主導を前提とした方策を堅持してまいります。汁物、カレー等の献立については、当初は、米飯を中心とする給食を予定しておりますが、生徒の嗜好等を勘案しながら献立の巾を広げてまいります。また委託業者数については、複数業者を選定していく考えであります。


小学校の適正配置 検討の内容は
[問]小学校の適正配置について、市は平成七年八月に審議会を設置し検討してまいりました。この審議会の委員の任期が本年八月に切れると聞いていますが、本日までの委員会の審議内容、今後の方針等、現時点で発表出来るところをお示し願いたい。

[答]現在、「市立学校適正配置審議会」内に設置されました小委員会において、中央部地域における小学校区の設定・変更について、検討が続けられているところであります。
 ここでの審議内容といたしましては、甲府駅を挟んだ小学校十校に係る再編をどうすべきかを中心として、就学人口の推計や通学距離、安全性などを中心に理想とする学区設定は如何にあるべきか、想定される諸問題についての論議を尽くしているところです。
 今後、審議会の答申を待って行政責任の立場から慎重に対応して参りたいと考えております。


新総合計画 具体的な人口増加策は
[問]新総合計画では、目標年次の常住人口を、二十一万一千二百人としております。その対策として、基本構想においては新たな宅地開発など、定住条件の整備等による人口増加、さらに基本計画においては、市街化区域の拡大や生活環境等定住条件の整備などによる社会増加としております。
 これらの具体的対策は、区画整理事業だと考えられますが、前の第三次総合計画での人口増加対策も、区画整理事業がその中心であり、いろいろと論議されましたが、この事業によって人口増加が図られるものでないことが良くわかっております。それに加えて、今後予想されます、土地動向から見ても、区画整理事業を行うこと自体困難ではないでしょうか。基本構想、基本計画での人口の社会増加対策を具体的にお示しください。

[答]活力に満ちた甲府市創造のためには、人口の増加を目指すことが必要と考えます。
 新総合計画においては、約一万人の人口増かを目標として、各施策に取り組んでまいりますが、具体的内容については、市街地再開発事業による雇用機会の創出に伴う市内居住者の増加策、市街化区域の編入や民間の宅地開発による可住地の拡大策に加え、本市の魅力を更に高め、住んでみたくなる街づくり、低廉な価格で宅地を分譲する工夫や、住宅マスタープランの策定による公営、民間住宅の供給方法などハード、ソフト両面の施策の取り組みにより目標人口の達成を目指したいと考えております。


平成9年度予算 市税伸び率(6.89%)の裏付けは
[問]一般会計のうち市税の伸び率を、六・八九%と見込んでいますが、これは所信の中で市長が述べられている、緩やかながら景気は回復期調にあるという読みから来ていると思います。しかし、特別減税の打ち切り、社会保険料の負担増、円安による電気、ガス料金、ガソリン、灯油価格、輸入ブランド品などの値上げ、これに消費税アップ分がさらに上乗せされ、市民生活に影響を与え始めており、景気は回復期調にはないと思います。
 市税の伸び率に対する裏づけを、どのように考えているのか。

[答]市税収入の見込みについては、まず国の地方財政計画を指針として、本市の状況を加味する中で、算定を行ったところです。
 国の財政計画の伸びは、地方税九・六%の増を見込んでおります。しかし、本市ではこのような伸び率は期待すべくもなく、最終的には前年比六・八九%を見込んだところであります。
 内容的には、個人市民税は、特別減税の廃止と県民税からの税源委譲分などの税制改正を見込み、前年比七・0七%増を、法人市民税は経済動向に大きく左右される税目でありますが、経済の緩やかな回復、住専処理の影響、国の地方財政計画などにより、前年比一九・九%を、固定資産税については、今回の評価替えによる、税負担の緩和措置及び据え置き措置等により、前年比0・一%増を、市たばこ税については、県民税からの税源委譲分も含め、前年比二四・五%を、都市計画税については、固定資産税と同様な措置として、税負担の緩和措置及び据え置き措置等により、前年比五・二%の減を見込んだところであります。以上、主な市税の内容でありますが、全体では前年比六・八九%の増となったところであります。


「文化財を活かしたモデル地域づくり」 構想の内容は
[問]市長が表明されました、相川地区及びその周辺を対象とした「文化財を活かしたモデル地域づくり」が、地域の活性化に結びつき、「ゆたかさ」や「ゆとり」、「心のやすらぎ」や「快適さ」を実感できる街づくりとなりますよう期待しますが、その構想の趣旨と内容を、また、九年度事業費の内訳を具体的にお示しいただきたい。

[答]史跡武田氏館跡整備基本構想・基本計画立案作業の一環として、「相川地区及びその周辺を対象とした、文化財を活かしたモデル地域づくり」の構想を策定するものであります。
 具体的には、武田氏館跡の整備を主体に、周辺文化財の整備・活用、街路整備、駐車場等の施設計画、動植物保護、美観形成、商業ゾーンの設定などを検討していく内容となっています。この構想の策定により、地域の伝統文化や歴史景観の保存、再生そして整備、活用を図り、地域住民にとっては住みやすく観光客にも魅力あふれた街づくりを目指したいと考えております。なお、平成九年度事業費の内訳は、史跡公有地化に伴う用地取得・建物補償等三億円、発掘調査費千三百万円、史跡公有地管理費三百三十万円、整備基本計画策定費九十万円でございます。


中学校歴史教科書 採択の経過は
[問]平成八年度文部省検定済みの「中学校歴史教科書」は甲府市教育委員会が採択している「教育出版」社をはじめ七社でありますが、電気通信大学の西尾幹二教授は「従軍慰安婦問題と南京事件については、歴史的事実として確定されていない問題であり、時代遅れの唯物史観に毒されたケースである」と言っております。検定済み教科書全てに「従軍慰安婦」の記述があるわけでありますが、中でもワースト3は、「教育出版」、「大阪書籍」、「日本書籍」と指摘しております。「教育出版」のものをどのような採択経過により決定されたのかをお聞かせ願いたい。また、「従軍慰安婦」や「強制連行」という内容について、どのように指導していくつもりなのか、お聞かせください。

[答]本市の中学校で使用する教科書の採択については、甲府市と中巨摩郡の町村の教育長等で構成する峡中地区採択協議会が、県教委の指導助言を受ける中で協議会が選任する選定委員(甲府五名、中巨摩五名)の調査、研究の成果と各中学校において独自に検討を進めてきた結果を、総合的に意見集約し登録教科書の中から一社を選定し採択教科書の決定を行っているところであります。
 したがって、平成九年度の教科書についても厳正な選考規定により、多くの意見を考慮して選ばれたものです。
 「従軍慰安婦」や「強制連行」の記述については、戦時下の悲惨な歴史的事象のひとつとして、様々な戦後補償の例として、世界平和実現に努めることの大切さを理解させるためのものでありますが、各学校の指導方法などの研究と合わせ、中学生の心身の発達段階を考慮して指導することが必要であると考えております。したがって学校現場の指導にあたっては、教科書を使用しながらも様々な意見があることも含め、偏った指導にならないように配慮を求めてまいります。要は、戦争の恐ろしさ、悲惨さを認識する中で世界の恒久平和の大切さや、国際社会に生きる日本人として自覚を高めるよう指導することが肝要であると考えております。


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