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更新日:2022年2月14日

太宰治

太宰治が甲府を訪れたのは、昭和13年9月であるからもう80年以上も前のことです。そのころの太宰治は、最初の夫人である小山初代と離別し、文学仲間と遊興するなど無頼な生活を送っていました。そうした状況を心配した周囲の人達が正常な生活に戻すため太宰に妻帯することをすすめ、結婚相手を探していました。そんな矢先、太宰治が師事していた井伏鱒二を通じて甲府市水門町29番地の石原美知子との結婚話が持ち込まれました。太宰治29歳の時です。

太宰治はそれまでの生活を一新し、思いを新たにする覚悟で下宿を引き払い、井伏鱒二が滞在していた御坂峠天下茶屋を訪ねました。天下茶屋に滞在して間もなく、石原美知子宅で見合いが行われ、井伏鱒二と紹介者の斉藤せい、美知子の母くらが立ち会いました。太宰と美知子には異存はなく婚約が整い、太宰は結婚の準備のため天下茶屋を下り、石原家近くの下宿屋寿館に宿を定め、結婚式を挙げるまで石原家と親交に努めました。

昭和14年1月、杉並の井伏鱒二宅でほんの身内だけが集まった結婚式が行われました。その後、太宰は新居を甲府市御崎町56番地に構え、天下茶屋滞在のことを書いた「富嶽百景」や「I can speak」「新樹の言葉」など甲府を舞台にした作品を次々に発表していきました。甲府での生活は、8月までと短期間ではありましたが、夫人の実家があったことから、その後も湯村温泉などを度々訪れています。特に、昭和20年4月から7月までは夫人の実家に疎開しましたが、7月の甲府空襲に遭い焼け出されています。この時のことを作品「薄明」では詳しく述べています。

昭和23年6月、玉川上水に入水して39年の生涯を終えましたが、太宰治死後、「斜陽」などの作品はベストセラーとなり、今でも多くの人に読まれています。

太宰治マップ

太宰治お気に入りの宿 信玄の湯 湯村温泉郷「旅館明治」

「旅館明治」は太宰が小説を執筆したことで有名な宿です。
太宰は、明治でも最も眺めの良い部屋を指定していたそうで、執筆は2番目に明るい部屋で、寝起きは1番明るい部屋と決まっていたそうです。
現在でも少しかたちを変えてではありますが、太宰の泊まった部屋が残されており、部屋の正面には太宰の作品などが展示してあります。

御崎神社

御崎神社の画像

太宰は、執筆の合間に住まいの御崎町周辺をぶらぶらと歩いていたようです。
御崎神社もその1つ。太宰の家からは目と鼻の先にある神社です。
当時、着流しに下駄という姿で散歩をしていた太宰を目撃した人もいるのでは?

太宰治夫婦新居跡

太宰治夫婦新居跡の画像

太宰と妻・美知子は昭和14年1月に新居となる御崎町(現・朝日5丁目)の借家に移りました。
8ヶ月という短い期間でしたが、充実した日々を過ごしたようです。
新居は空襲で焼けてしまいましたが、現在は新居があった場所に「太宰治僑居(きょうきょ)跡」の石碑があります。

太宰治が通ったお風呂屋(喜久の湯)

喜久の湯の画像

太宰は毎日3時ごろまで机に向かい、それから近くの「喜久の湯」に行って、汗を流したといわれています。
喜久の湯の創業は昭和9年。今でも地元の皆さんの憩いの場として親しまれています。

清運寺

清運寺の画像

寿館の前の道は清運寺の参道になっていて、中央には大きな敷石があったそうです。
現在は、アスファルトの道路になっていますが、太宰が執筆の合間に散歩がてら通ったであろうその参道の敷石は、現在、境内の藤棚の下に敷き詰められています。

太宰治が結婚直前に住んでいた下宿「寿館」跡

甲府へ移り、最初に住んだのが寿館。残念ながら空襲で焼けてしまい、現在はその姿を見ることはできません。
寿館から石原家までは歩いて数分だったので、太宰は毎日のように石原家に足を運んで、手料理とお酒をごちそうになっていたそうです。

太宰治の妻・美知子さんの実家跡

石原家は空襲で焼けてしまい、現在は駐車場になっていますが、当時は駐車場南の道路まで石原家の私道だったというので、かなり広い敷地だったようです。

太宰治のゆかりの場所(甲府市内)

 

旧住所

現在の住所

新居跡

甲府市御崎町56番地

甲府市朝日5-8-11付近

石原家跡

甲府市水門町29番地

甲府市朝日1-8-13付近

寿館跡

甲府市竪町93番地

甲府市朝日5-3-7付近

喜久の湯

甲府市久保町28番地の8

甲府市朝日5-14-6

旅館明治

甲府市湯村町388番地

甲府市湯村3-10-14

太宰治の山梨に関わる作品

  • 富嶽百景
  • 新樹の言葉
  • 畜犬談
  • I can speak
  • 当選の日
  • 春昼
  • 美少女
  • 服装に就いて
  • 律子と貞子
  • 黄村先生言行録
  • 薄明
  • カチカチ山