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更新日:2024年4月10日

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Can-Pass卒業生の紹介
特定非営利活動法人イエカラ 代表理事 新井円さん(3期生)

空き家の改修、所有者と借り手のマッチングサイトの運営、借り手の起業支援など、空き家を中心に多角的に事業を展開

健康寿命を考えるとそろそろ人生の折り返し地点という時に、生涯現役でいるためには、生涯楽しいと思える仕事がしたいと考えていた新井円さんが、自身の空き家購入をきっかけに出会った空き家のリノベーション事業。仲間との出会いや起業へ向けての勉強を経て、2022年11月に特定非営利活動法人イエカラを設立しました。空き家率全国ワースト1位、9万戸の空き家がある山梨で、空き家の利活用を進めようと、空き家の改修事業だけではなく、所有者や借り手の思いを伝えることで双方のマッチングを図る取組や空き家を利用する方の起業支援や創業支援など様々な事業を展開されています。現在は、補助金や助成金を活用しながら活動している新井さんですが、将来的には自走できる団体になること、NPOが「選べる行政」であるという考えを浸透させるべく、セミナーなどを開催しながら「寄附文化」の醸成などにも取り組まれています。

山梨には夢を叶える9万の舞台がある!空き家を利活用することで「地域の資源に」

私が代表を務める特定非営利活動法人イエカラは、山梨県全域の遊休不動産・資源・自然・産業・伝統工芸を創造的に活用することで、地域住民や地元企業と共に持続可能な社会づくりを目指し、「県民一人ひとりが豊かさを実感できるやまなし」を実現し、県民社会福祉の向上に寄与することを目的として、2022年11月に設立しました。

全国的に問題となっている「空き家」ですが、私たちが住んでいる山梨県の空き家率は全国でワースト1位です。ネガティブに聞こえますが、私たちは「やりたい想い」を実現する物件が9万戸も眠っている!と考え、空き家の利活用に取り組んでいます。

活動をしていく中で感じていることは、1軒の家にも所有者や家族だけではなく、親せき、近所の方、その家に遊びに来ていた友達、これからその家を使いたいと考えている方など多くの人が関わっていて、空き家一つひとつ、それぞれに人間模様があるということ。ただ空き家の利活用をするということではなく、行政や空き家の所有者、空き家を借りたい人など、それぞれの要望をしっかりヒアリングし、マッチングさせていくことが大切だと考え、空き家を取り巻く問題をトータルで考える取組を行っています。

 

 

さかさま不動産 やまなし支局
借りたい人のやりたい想いと貸したい人の想いをつなぐ
不動産WEBサービス。
物件情報を掲載するのではなく、借りたい人の夢や想いを掲載し、借主を探している家主とマッチングする取組。

偏愛不動産
「貸す相手は誰でもいいわけじゃない」「想いを伝えたい」「こんな人に使ってもらいたい」という通常の不動産情報では掲載できない物件所有者の想いを伝え、借主とマッチングする取組。

アキヤマモリ
放置していると様々な問題につながってしまう空き家や空き地。適正な管理を行うことで、資産としての価値を維持し、良好な状態で次世代へ繋げる、空き家・空き地の管理サポート。町の景観維持にも繋がる取組。

 

現在は、空き家改修や「さかさま不動産」の活動をしていく中で、空き家を活用したい方に起業や創業を目指す方が多いことから、起業支援や創業支援といったコンサルティング事業も行うようになってきています。その他にも、イエカラの空き家利活用の第1弾として手掛けた「イエカラまちなか工作室」は、親子向けの木工教室やDIY教室などの開催のほか、地域の方の交流する場として活用しており、その交流を通して新たな仕事が生まれる好循環を生み、イエカラが目指す「空き家を利活用することで地域の資源に」という考えを象徴する場所となりつつあります。

 

生涯現役でいるために、生涯楽しいと思える仕事をしたい


健康寿命を考えるとそろそろ人生の折り返し地点という時に、それまで苦労が多い人生だったこともあり、「これからはもう楽しいことしかしない人生にしよう」と思うようになりました。もともとエステティシャンで個人事業主として働いていたため、年金などに頼るのではなく生涯働ける状態をつくりたいとも考えていた私は、生涯現役でいるためには、生涯楽しいと思える仕事がしたいと考えていました。

そんな折、空き家を購入し、自身でリノベーションを行っていたところ、当時工務店の営業だった現副理事に出会い、「こんなにリノベーションができるなら仕事にしたらどうか」と声を掛けられ、空き家のリノベーションを面白いと思っていた私は仲間を集め、起業することを決意しました。

いざ、起業しようと考えた時に、もっと知識を得ようと様々な起業セミナーに参加する中で、甲府市のCan-Passセミナーに出会いました。法人格を何にしようか、どう選ぼうかと迷っていた私は、個別相談などを利用して講師の方に相談し、株主がいないため誰のものでもないこと、誰でも参加できる参加型のビジネスモデルであるところが良いと思いNPO法人として設立することを決めました。

 

Can-Passセミナーに参加して得たものは人脈

Can-Passではいろいろな方との繋がりをつくってもらいました。
セミナーの中で実施された現場見学会で訪れた山梨県の「やまなし創生官民連携 空き家活用促進事業」としてオープンした「結」では、プロジェクトを手掛けた株式会社SHOEI 代表取締役社長の大原さんと出会いました。現場見学会後、ご連絡をさせていただく関係になり、今でも折に触れ、空き家の利活用についてなどアドバイスをいただいています。

また、私たちがイエカラとして初めて開催した講座に講師としてご登壇いただいたKEIPE株式会社 代表取締役の赤池さんとは、Can-Passの講師の方にご紹介いただいたことをきっかけに知り合いました。私は「pay it forward(自分が受けた善意を他の誰かに渡すことで、善意をその先につないていく)」という言葉が好きなのですが、KEIPEさんのHPにもその言葉が書いてあったことで関係が深まり、現在は法人としてイエカラの賛助会員になってくださるなど関係が続いています。

私は甲府市出身ですが、一度市外に出ていることもあり、地域の中に人脈がほとんどありませんでした。そんな中、現在の事業に繋がる事業主の方と繋がりができたことは現在の財産となっています。また、私の考え方の基準となっている「協働のテクノロジー」の著者である松原明さんとの出会いも講師の方につくっていただき、とても感謝しています。

 

 

自走できるNPOへ〜寄附文化の醸成を目指しています〜

NPOの仕事は本当に大変ですよ。達成感を感じている暇がないくらい、次から次にやることがあるから。でも、「大変」と「苦しい」はイコールではないと思っていて、楽(らく)して楽しいこともあるだろうけど、とりあえず目の前にあることしかできないので、それをやる。やってみて楽しければそれでいいし、仕事だからやっているうちに楽しくないこともあるけど、3ヶ月後には笑い話になるでしょうみたいな感覚でいます。誰かの役に立ちたいなんて私は思っていなくて、自分が楽しい人生で終わるために目の前にあることを一生懸命やっているという感覚です。


そんな私が今目指していることは、補助金や助成金に頼らず自走できる団体になること。普通NPOは収益事業ではないものを対象としている団体が多いのですが、イエカラは収益事業を主としているため、普通の株式会社と同じだけ税金を納める必要があります。一方で株主がいるわけではないので資金を集めることが難しいという課題を抱えています。
そこで、現在取り組んでいることが寄附文化をつくることです。海外の先進諸国ではNPOやNGOは「選べる行政」と言われており、このNPOのこの事業を応援したいから税金の代わりに寄附をするということが浸透していますが、日本ではまだその文化がありません。日本でも認定NPOになれば寄附金控除がありますが、認定してもらうためには要件が厳しく、認定を受けていないNPOの場合、大きな財団の募金活動等で集まったお金を助成事業や補助事業といった形で受け取るという流れが主流となっています。この構造では募金した人にとっても使途が分かりづらいため、直接募金をする文化を醸成していけたらと考えています。文化にしていくということは難しく、活動していく中で、伝えていくことや、同じように寄附文化をつくろうとしている団体と連携していく必要もあると考えています。とても難しい課題ですが、寄附文化の必要性などを伝えるイベントを今後も継続的に開催し、実現させていきたいです。

 

補助金や助成金にチャレンジしてみてください

イエカラの設立は2022年の11月で、まだ設立してから1年半も経っていませんが、今まで様々な補助金や助成金を活用しています。
今まで採択された事業の中で一番大きいものは国土交通省の「住宅市場を活用した空き家対策モデル事業」です。
最初から大きな補助金や助成金にチャレンジされる方も多いと思いますが、私は小さなものからチャレンジすると良いのではないかと思っています。
イエカラも最初にチャレンジしたのは甲府市の「女性活躍等に係る企画提案事業」という10万円を限度額とした小さなものでした。
小さな補助金や助成金の場合、申請書の書き方などを教えてくれる場合が多いので、とても勉強になります。
私もこういった補助金を活用したことが、大きな事業で採択されるためのステップになったと思っています。
また申請書を書くこと自体が自身の事業を言語化する練習にもなります。
「私が使うなんて申し訳ない」という方もいますが、やりたいことがある方はもっと活用するべきだと思います。
今後の勉強にもなるのでぜひトライして欲しいですね。

特定非営利活動法人イエカラのご紹介


■住所
 甲府市青葉町2番14号
■お問い合わせ先
 info@iekara.org
■HPなど
 HP:https://iekaras.org/(別サイトへリンク)
 Instagram: https://www.instagram.com/iekara_sdgs/(別サイトへリンク)
 facebook:https://www.facebook.com/people/特定非営利法人イエカラ/61553766617739/(別サイトへリンク)