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更新日:2023年6月30日

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甲府青年会議所理事長(2023年度) 大島わかなさん

妊娠して初めて痛感した男女の差、母としての喜びと今までできていたことができなくなる不甲斐なさ
何事も「できないかも」と諦めるのではなく、「どうやったらできるか」を考えることが大切

2022年度「甲府市女性活躍推進チャレンジ女性の部」を受賞された大島わかなさんは、弁護士であり、1児の母でもありながら、女性初となる甲府青年会議所の理事長(任期2023年1月から12月)を務められています。弁護士としても青年会議所の活動の中でも「女性だから」という大変さを感じたことがなかったという大島さん。妊娠して初めて男女の差を痛感したそう。それでも何事も「できないかも」と諦めるのではなく、「どうやったらできるか」と「できる方法」を考え、全力で取り組んでいるとのこと。
「仕事をしながら子育てをする女性が「申し訳ない」と思わずにすむ社会」を実現するためには、周りの理解が大事だと話してくれた大島さん。ご自身も様々な悩みや葛藤を抱えながらも、子育てと仕事の両立を目指す女性の道を自ら切り開いているその姿は、周りの方々に「女性が働くこと」への理解を促し、女性自身に「働きたい」「働き続けたい」という活力を与えてくれています。

弁護士をめざしたきっかけは、身近な人が悩んでいるときに「何もできない」という無力感


大学在学中に、親しい方と急に連絡が取れなくなったことがあったんです。
後に、その方が法的なトラブルを抱えていたことを知ったのですが、当時私は法学部に在籍していたにもかかわらず、自分の大事な人がトラブルに巻き込まれているときに、何にもできないんだなという無力感を感じて…。
もともとは弁護士になるつもりはなかったのですが、そのことをきっかけに、「身近な人が悩んでいるときに、助けられる立場になりたい」と思い、「弁護士になりたい」と思うようになりました。
でも、その時、私は大学のマンドリンクラブに所属し、勉強する暇もないほど活動に没頭しており、やりきりたい思いもあったので、両親に相談し、大学を卒業してからロースクールに通い、弁護士を目指しました。

現在は小野法律事務所にて、民事、家事、破産、労働、刑事等を取り扱う弁護士として活動しています。
また、子どもの権利委員会の中の学校問題部会の部会長を任せていただいていて、いじめや学校問題など、子どもに係る問題に取り組んでいます。子どもの問題に弁護士がしっかり関わるというこの取り組みは今後もしっかり行っていきたいと思っています。

 

 

人との繋がりを求めて入会した青年会議所「ここでの出会いは私の財産」


私は、生まれは甲府なのですが、育ったのは埼玉県なので、甲府に戻ってきた当初は近くに知り合いがいない状態でした。
新しく知り合えるのは弁護士しかいなくて、仕事上相談できる人も、休日遊ぶ友達もいなかったんです。
そんな時に、先輩弁護士から「青年会議所に入るといいよ」と誘われて、知り合いを作るくらいの気持ちで入会することにしました。

入ってみると、思っていた以上に知り合いができて、本当にありがたかったです。
異業種の方と知り合えて、自分の仕事に繋がるのもすごくありがたかった。困ったときに、アポとかではなくて、電話1本で「ちょっと困っていて…」と言うとアドバイスをくれたり。逆に「会社でトラブってしまって」というときにパッと電話をくれて、「それはこうしたほうがいいよ」と言える。そういう関係性が本当に私にとっては、助かるし、今後もきっと助かると思っています。

それに、大人になってから幼馴染みたいな感じで心許せる関係性になるのは大変だと思っていたんですけど、青年会議所の活動の中で苦楽をともにしたことで、仕事とは関係のない、そういう関係の友達が何人もできました。その出会いは本当に人生の財産ですね。

 

 

「苦楽の楽だけではなくて、ちゃんと苦も経験したほうが良い」 経験の先に見つけたもの


私が青年会議所で役職に就いたきっかけは、先輩弁護士から言われた「青年会議所に入ったなら、苦楽の楽だけじゃなくて、ちゃんと苦も経験したほうが良い。それが絶対に、自分の仕事にも、大島さん自身の人生にも生きるから」という言葉なんです。

青年会議所の活動も役職に就かなければ苦楽の「楽」だけ味わえるのかなと思うんですが、役職に就くとやっぱり大変なんです。
責任ある立場で、いくつものイベントを計画し、関係先と打合せしたりということを、それぞれ自分の仕事をしながらプラスαでやらなくてはいけないので。

実際に役職に就いてみると、やっぱり大変でした。でも、大変な分、終わった後の達成感も、得るものも大きかったですね。自分の成長具合を自分がわかるほどに、役職の任期1年間で得るものは多かったです。毎年は大変だと思いますけど、経験として役職に就くのは、成長になると思いますね。私も毎年ではなく、役職に就かない年もありながら、少しずつ上の立場になっていき、今は理事長を引き受けているという感じですが、役職が上がっていくことで、人間関係もどんどん作られていきましたね。

時間の使い方もすごく効率的になったと感じています。もし、一人で弁護士業をやっていたら、自分でやればいいやと言って、自分だけの世界で終わっていたと思うんです。でも、青年会議所での活動を通して、自分で抱え込まずに、誰かにお願いして一緒に協力してやることで、もっといい結果になることがわかったというのは大きな学びでした。

 

初めて体験した「女性」であることからくる「葛藤」 

私は、弁護士としての活動の中でも、青年会議所の活動の中でも、「女だから」という大変さは感じたことがなかったのですが、妊娠をして初めて自分が女性であることを痛感しました。
妊娠することによる周りの目の変化をとても感じたんですよね。
「労わってあげよう」という良い意味でも、「できなくなってしまうから」というネガティブな方向でも。

実際に、どうしてもストップさせなければいけなかったり、ゆっくりやらなければいけなかったり、今まで通りに時間が使えなかったり、今まで通りのことができなくなってしまって・・・。妊娠が分かってからは、お客さんにも青年会議所にも理解してもらって、さらに自分の手足となって動いてくれる人をつけてもらって対応はしたんですけど、それでも足りなくて…。
母としての喜びと、自分が人として今までできていたことができない不甲斐なさ・・・。
妊娠中と出産してしばらくは味わったことのないような不思議な感覚でした。葛藤ですよね。

女性が普通に仕事を持って、働いていく分には男性と女性って多分そんなに変わらないはずなんですけど、やっぱり妊娠って、本当に一大イベントなんだな、そこで女性と男性は本当に大きく分かれるんだと痛感しましたね。

うちは夫も夫の職場も子育てすることに理解があり、仕事の調整をつけてくれるので、子どもが熱を出した時や夜の寝かしつけなども夫が対応してくれることが多くて、娘はパパっ子なんです。パパのほうが一緒にいる時間が長いので、眠い時とか安心したい時とか病気の時に特に「パパ、パパ」になって、「ママいや~」となるんですよね。そのことが気になってしまって「パパっ子っているのかな?」とか「ママが嫌ってことはあるのかな?」と調べてしまう。そうすると「嫌だと言っていても、安心したい時や病気になった時はママに行くでしょ」みたいに書いてあるんです…でも、うちは逆なんです。そのことが、辛くて…。
多分世の中のお父さんは、今までそれで普通だったわけですよね。もしかすると辛いと思っているお父さんもいたかもしれないけど、何となくパパってそういうものだって思えていたのかなと。それがママでそうなってしまっていることが悪いこととか、自分が駄目だとか。どうしてもそういう気持ちはあるんですよ。ジェンダーですよね。

それを言ってはいけないんだ、思わなくていいんだよって、自分に本当に言い聞かせながら、「そもそもパパとママというくくりなんてない!同じ親だ!」と思うようにして、子育てをしています。

 

仕事・子育てをしている中、新しいチャレンジができたのは「周りからの後押し」のおかげ


2023年度の青年会議所の理事長に誰が就任するかという話し合いをしていたのは、2022年の6月末頃なんですが、その時、子どもはまだ生後10ヶ月で保育園にも通い始めたばかり。子どももかわいいし、仕事以外の時はできる限り一緒にいたい、できることなら仕事を辞めてでも一緒にいたいくらいだったので、最初は自分がやるつもりはなかったんです。でも、他に立候補する方もいないし、周りからも「やってみないか」と言われる中、2023年度が私にとって青年会議所で活動できる最後の年ということもあって、やってみようかなと思って周りに相談したんです。そしたら、夫も「最後の1年は最大限協力してあげるからやってみなよ」と言ってくれて、職場の上司も「ここまで続けてきたんだから、やってみなよ。理事長の任期が終わった後、またフルで弁護士も子育てもやればいいじゃないか」と背中を押してくれたので、「それなら、やろう!」と決断しました。

青年会議所の理事長を引き受けたことで、今まで以上に仕事のやり方を工夫する必要がでてきましたし、周りに協力してもらう、理解してもらうことがより一層必要になっています。ありがたいことに、職場も家族もとても協力してくれますし、お客さんも「子どもが熱を出してしまった」と言うと「大丈夫ですよ」と言ってくれたり、本当にみんなで育ててもらっているという感じですよね。

 

 

仕事をしながら子育てをする女性が「申し訳ない」と思わずにすむ社会を

私のように子育てをしながら働いている女性は様々な葛藤を抱えていると思うんです。
子育てをしながら仕事をしていくことは本当に大変なことで、周りの理解が必要だなと痛感しています。
子育てしているから、できないとか、頼めないとか、そういう目線で見られると萎縮してしまうじゃないですか。
できない人、頼んでもらえない人というふうになってしまうから、ママたちも子育てすることについて申し訳ない気持ちになってしまう。実際私もそう思ってしまうこともあるんですけど…。

でも、それでは、女性が悩んだときに、諦める方向にいってしまうと思うんです。だから、「頼まない」とかではなくて、「こうしたら両立できる」とか、「こういう手伝いをしてあげよう」とか、「その人ができるようになるには、どうしたらいいかな」という目線を周りが持つといいかなと思います。
妊娠をするという身体的な違いはあれど、妊娠している時でも、女性が仕事を続けられるようにするにはどうしたらいいかというふうに社会全体が考えるようになれば、女性も仕事をしていることを悪いこととか、子どものお世話をする時間がない駄目なお母さんとか思わずに、生活できるんだと思います。私自身もですけど、社会全体の意識が変化していく必要があると思うんです。今大学でも少し授業を持っているので、次の世代に「ママだからとかパパだからとかじゃなくて、一緒に子育てをする社会がいいんだよ」ということを自分の葛藤した経験も含めて、伝えていきたいなと思っています。

 

逆に、そういう環境を作るためには、ママたち自身も頑張る姿を見せることが大事だと思うんですよね。
なので、私は弁護士の仕事も、青年会議所の仕事も、子育ても、全部一生懸命やっているつもりですし、弱音もなるべく吐かないようにしています。
特に青年会議所では、背中を押して、「頑張れ」とみんなに言う立場なので、自分が、「子育てが大変で…」とか、「仕事が…」とかではなくて、「いつもみんなありがとう、私も頑張っているから頑張ろう」と。理事長としてしっかりどんと立って、「頑張れ」と言って、みんなの背中を押してあげられるような存在でい続けたいと思っています。私自身が理事長という立場を精一杯楽しまないと次の世代に繋がらないとも思っているので。
職場の職員さんも、きっと私が、大変だけどやりがいを持って頑張っている姿を見てくれているから協力してくれているんだと思うんです。周りの方々には感謝しかありません。だからこそ、一生懸命取り組んでいる姿を見せることはとても大事だと思っています。

 

「どうやったらできるかな」と考えること「できる方法」を探すことを大切にしてみてください

 

「何かをやりたい」と思ったら「できる方法を探す」ということが大事かなと思います。
「できるかなあ」「できないかなあ」とかではなくて、「どうやったらできるか」という方法を探すっていうのかな。

できないことなんてないと思うんですよ。例えば規模を小さく始めてみるとか、方法はあると思うんですけど、できないということはないと思う。「どうやったらできるかな」という方向に頭を動かしてもらうと、道筋が見えてくるし、「どうやったらできるかな」という考え方は前向きなので、すごく素敵じゃないですか。だから周りもきっと応援してくれると思います。

私も理事長を引き受ける前は「できるのかな」と考えていましたけど、「やる」と言ったら、やらなければいけなくなって、どうやってやりくりしようかなと。そうすると、やり方が見えてきて、できるんですよね。
だから私も悩んでいる人にアドバイスする時は「どうやってやるかを考えよう」と言っているので、皆さんにもそのように伝えたいですね、できないということはないと思うので。

 

 

 

大島わかなさんのご紹介