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更新日:2022年8月30日

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令和4年度 山梨県男女共同参画推進事業者等
「女性のチャレンジ表彰」受賞 田中千晶さん

 

車いすに乗っていても誰かの力になることができるかもしれない・・・誰かの力になることが私が生きている証です

令和4年度山梨県男女共同参画推進事業者等の「女性のチャレンジ表彰」を受賞された田中千晶さん。
2014年から描き始めた絵画は、2019年・2020年に「山梨県障害者文化展 最優秀 知事賞」を受賞し、2021年には自身初となる個展も開催。
同年、東京五輪聖火リレーでランナーを務めるなど、多方面で活躍するパワフルでありながら、とても優しい雰囲気をまとう女性。
突然の病で手足が不自由となり車いす生活となった田中さんが、たくさんの方に支えられ、一つ一つ取り戻していった先にある現在の活動は、
苦悩の時間があったからこそ、どれも奥深い輝きを放ち、多くの人々の心を動かしています。

 

苦しい時間や、もう駄目だって思う気持ちも、その人を育てる大切な気持ち


2007年、息子が8歳の時に、突然原因不明の病で手足が不自由になって、10年間ひきこもったんです。
自分の姿を誰かに見られることにも抵抗がありましたし、自分の中で変わり果てた自分という気持ちがあって。
当たり前にできていたことが、何一つ当たり前じゃないというふうになったときに、本当に、心が死んだなと思いました。
泣き疲れたというか、涙も出ない。
なんで私の人生にこんなことが起こるのかなって、「私、何かしたっけ・・・」とか、
本当にそんなことばかり考えた時期がありました。

でも、その時期に感じた思いも私の一部で、そういうふうに思ったり、引きこもった自分を今でも悪いとは思っていないです。
その実感があって苦しんだ自分がいるから、言えることもあると思っているんです。
その苦しい時間や、もう駄目だって思う気持ちも、その人を育てる大切な気持ちだと思いますね。

車いすに乗ってなかったら、出会えなかった人もたくさんいて、出会えたから私の人生にも大きな影響を与えてくれてる方たちがたくさんいらっしゃるので、やっぱり、何が悪いって多分なくて、全てが経験。

 

人の心に触れることの大切さを実感したから、私も誰かの力になりたい

病気になってから4年がたった頃、家族に全てを担ってもらうことに限界を感じて、ヘルパーさんに自宅での入浴介助をお願いしました。
それが、私にとって社会との接点が繋がった瞬間。ヘルパーさんとのささいな会話、外からの情報が、もう一度私に社会に目を向けるきっかけをくれたんです。

社会との接点が生まれたら、外に出かけたくなって、近所に買い物に行きたいなとか・・・。
外に出るなら、お洒落もしたい、洋服買わなくちゃ、お化粧もしたい、美容院行こうかとか。
表に出ると人に出会い、出会った人がまた刺激をくれて・・・。
その時にかけていただいた何気ない言葉とか一つ一つが、私の心を前に向かせて、立ち上がらせたっていう思いがすごくあります。

私自身が人の心に触れるってすごく大切なことだと実感して、車いすに乗っていても誰かの力になることができるかもしれないと思ったんです。
そのためには、私が表に出ていかなければ、そうはできない。誰かの力になることが私が生きている証にもなるんです。
だから、本当に人の繋がりが、私をこうさせてくれて、そして私がこうすることが、誰かの力になればっていうところに繋がっていく。
だから、人との繋がりが私のモチベーションです。
 

絵を描くことは、心の中を吐き出す表現

「山梨県障害者文化展 最優秀 知事賞」受賞作品

2019年「Nothing Blue」(写真左上)
2020年「幽玄」(写真右)

2021年 自身初となる個展会場にて

「陽水」の絵の前で樋口甲府市長と



自身の初作品の前でご両親と


絵を描き始めるきっかけは、通っている施設で、リハビリとして挑戦した書初めなんです。初めて口に筆をくわえて字を書いたら・・・意外と書けたんです。
そのときに、もしかしたら、筆なら絵も描けるかもしれないと思って、2014年ごろから描き始めたました。

私の絵は、全部、自分の心情を描いてます。
題名を先に決めて、そこから物語みたいにイメージを膨らませていく。
背景は、手でこすります。手に絵の具を付けて、ちょっとずつちょっとずつこすっていく。細い線等は、筆を口でくわえて描きます。
色だけは自分の中で、すごくこだわりがあります。色合いとか重ね方は、自分の心情を写すものと思って描いてるので。

口で描くので、身体的に厳しく、首がとても痛くなったりして・・・。
実は注射を打ちながら仕上げているんですよ。時間もかかりますし、年に1・2枚が限度なんです。

でも、でき上がった時の達成感が、最高なんです。
人間って何か表現をする方がいいと思うんです。私にはなかなか手段がないので、絵を描くことで、アウトプットしてるんだなって。
心の中を吐き出す表現として、ぶつけることで、自分の心がまたリセットされてるのかもしれないですね。

 

挑戦し続ける理由

生きていたらみんな苦しいことってありますよね。
私にとっては障害だけど、どんな人にも、迷う瞬間や、わからなくなる瞬間が人生の中にあると思うんです。
そういうときに、私の経験が耳や目から入った時に「ああ・・・」って、思ってもらえればと思って、取材とかもお断りしないようにしてるんです。


見られるのが嫌だったので、結構勇気がいることだったんですけど。
でもそういうふうに思えてからは、たくさんの方に見ていただいて、何か感じていただくことも、私にできることの一つだなと思っていて、お話をいただければ、お断りはしないって心に決めたんです。

自分がどう生きたいかっていうことを持っていれば、きっと自分の人生を終えたときに、「ああ、これが私の人生よね」って胸を張れるっていうふうに思います。
そういう風に思いたいから、もう立ち止まりたくないんですね。
時間は平等に与えられていて、しかも限られた時間を生きるのが人間だから、その限られた時間をどう生きるかは、その人のもの。
一度しかない人生を豊かにするのもつまらなくするのも自分ですし、誰しもが自分の人生のプロデューサーなんだと思います。

 

様々なチャレンジ〜活動の紹介〜


山梨県ボッチャ協会 副会長

競技の周知活動とともに、共生社会を目指すツールとして、ボッチャを通して何ができるのかを模索しながら、活動している。


講師活動

学校での福祉講話や、福祉従事者・介護の世界の方達の前で講師を務めることも。

 


東京五輪聖火ランナー

一番手がかかる時期に息子さんのお世話をしてあげられなかったことを負い目に感じていたという田中さん。息子さんとの一生の思い出にと応募し、参加できたことはとても嬉しかったとのこと。

今後の活動

今は、お話しさせていただく場が山梨県内で括られているんですけど、もし私の経験したことや考えていること、やっていることが、もっと世の中の方に必要とされて、聞いてみたいという声があれば、もっといろんなところに出ていきたいと思っています。
山梨県だけじゃなくて、どこにでも行ってみたいですし、その先で出会う方々ともお話をしてみたいというか・・・。
やっぱり、人の繋がりをとても大事に思っているので、いろんな方に出会って、その方の考えやお気持ちを聞かせていただくってことは、ライフワークにしたいなと思っています。

毎年、年が変わった時に、今年の目標を決めるという田中さん。
2022年の新たなチャレンジは「パラグライダー」。
「飛ばない人生より飛んだ人生の方がいいかなと思って」と言う田中さんの何事にも果敢にチャレンジする姿勢に脱帽。
筋力を鍛えるために始めたヴォイストレーニングでも、知り合いの方に誘われてコンサートを開催したことがあるなど、様々な活動を展開されています。

 

これから何かを始めようと思っている方、何かに迷っている方へ


私、「雲外蒼天(うんがいそうてん)」という言葉が好きなんです。
雲の中にいると、その雲の中しか見えないけど、実は雲の外はもう晴れていて、そこから飛び出しさえすれば、もう青空だよっていうこと。
苦しい時期って自分を育てる時間。苦しさが自分を育てるってこともあると思うんです。
だから、苦しいことだけに目を向けるのではなく、苦しさをどう乗り越えて、その先にある自分も思い描いて、ぜひ雲の外に出ていってもらいたいですね。もうその先は晴れているから、飛び出すだけだよって思って。
勇気を持つことも大事だし、イメージして欲しいですね。その雲の先は晴れているって。その晴れているところへ飛び出した自分を。
外に出ていく輝かしい自分を想像して、頑張って欲しいです。

失敗って大事。やっぱり失敗がないと、自分の足元って多分見つめない。
失敗しても、どうやったら、その失敗を乗り越えられるかとか、何か上手くいかないことがあっても、やり方を変えたらどうだろうとか。
発想を転換していくことが大事だから。そういうことを大事にしていけば、何か生まれるかもと私自身いつも思っています。

 

田中千晶さん略歴


2007年 突然原因不明の病で手足が不自由に
2014年 絵を描き始める
2019年 「山梨県障害者文化展 最優秀 知事賞」受賞 「Nothing Blue」
    山梨県ボッチャ協会(別サイトへリンク)にて選手として競技を始める
2020年 「山梨県障害者文化展 最優秀 知事賞」受賞 「幽玄」
    「こうふドリームキャンパス」にて「夢の先生」として講演
2021年 自身初となる個展を開催
  東京五輪聖火ランナーを務める
2022年 山梨県男女共同参画推進事業者等「女性のチャレンジ表彰」(別サイトへリンク)受賞