腹話術人形と一緒に防犯セミナーなどで活躍 飯室　眞奈美さん

飯室眞奈美さんは、腹話術人形とともに独自のユニークな語りで防犯セミナーや交通安全教育などを行っています。

まるで生きているかのような動きやおしゃべりをする腹話術人形とともに展開していく教室は、思わず前のめりになってしまうほどのおもしろさ。さらに教室に参加している人それぞれに大切な気付きがあったり、気持ちの変化が起こったり。

「腹話術人形は強力なコミュニケーションツールなんです。視覚的なおもしろさがあるので集中してもらえますし、人形を通して語ったメッセージはずっと記憶してもらえる感動があるんですよね。それに人間は体は1つだけど、内在しているもう1人の自分がいるんですよね。生身の人だと話せなかったりすることも、人形を使うと話してくれることも多いんです。本音や本心を語ることができたり、もう1人の自分を表現できるすごいツールです」と飯室さんはその魅力を生き生きと語ります。

飯室さんが腹話術と出会ったのは20代のころ。警視庁で警察官として働いていた時、交通安全教育のために行っていた腹話術を先輩から習ったのが始まりでした。

「当時は口がカクカク動く硬い人形を使い、裏声だけのおしゃべりで、まだ腹話術の奥深さやおもしろさをわかるまでには至っていませんでした。でもこの時があったからこそ今があるんですよね」。

その後、結婚で退職しふるさとの山梨に帰郷。「腹話術は好きでしたが、主人が警察官ということもあって時々お手伝いでする程度でした。子育てをしながらも自立したいという思いが強く、その頃は仕事や資格の取得に走り回っていました。ライフスタイルに合わせて仕事を選び、就いた職は15種類ぐらいになります」。

通信サービス業に企画営業職、子育て支援、ハローワークの職業相談員など、携わった仕事は本当にさまざま。仕事をする中で心理の勉強の必要性も感じ、6年前には山梨英和大学に入学し、2年間心理学を研究。昨年までの5年間は育英短期大学の非常勤講師も務めていました。

そんな忙しい日々の中、インターネットでふと目に留まったという「世界腹話術の祭典」の記事。「たまたま見つけて、腹話術は好きだったので、ちょっと出かけてみようかなと思って気軽な感じで行ったんです。そうしたら目からうろこでしたね。ソフトパペットも初めて見ましたし、何種類もの声で演出されていて、そのクリエイティブな世界にすっかりはまりました」。

改めて腹話術の魅力を実感した飯室さんは、腹話術のメソッドを学び直し、世界レベルの腹話術を身に付けようと勉強を重ねてきました。現在は日本腹話術師協会の理事長としても活躍していて、昨年はアメリカで行われた腹話術のコンペティションの中のインターナショナルショーに日本代表として出場。また平成19年からは全国読売防犯協力会の講師も務め、これまで全国各地150ヶ所以上で防犯教室などを行ってきています。

「腹話術の活動を通して本当に多くの人との出会いがあります。生きていることは出会うことだと思うんです。人は人との関わりの中で生きていて、その中ではいろんな問題が生じますが、それは関わることで解決していけるものです。言葉だけではなく、視覚的なコミュニケーションも豊かな関わりだと思います。そんな表現することの素晴らしさをもっと多くの方に伝えていきたいですね」とまっすぐなまなざしで語る飯室さん。

さらに「人形、自分、そして見てくれる人の3方向の関わりから生まれてくる現実、その場でないと生まれない現実のすごさを実感する毎日です。生きている醍醐味を体感しています」と目を輝かせていました。

まさに自立した輝く女性。飯室さんの腹話術のおもしろさや奥深さは、そんな飯室さんの生き方そのものが反映されているからこそだと感じました。これからさらにどんな魅力が加わっていくのか、楽しみです。