ホーム > 仕事 > 女性の起業等支援『Can-Passスタイル』〜女性の活躍と交流機会の創出〜 > 女性のための起業等支援セミナー「Can-Pass(キャン−パス)」事業紹介 > 2025年度「Can-Pass plus(キャン-パス プラス)」レポート〜DAY2〜
更新日:2025年12月15日
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開催日時:令和7年12月12日(金曜日)
会場:甲府市役所本庁舎6階大会議室
主催:甲府市
受託団体:任意団体オンテンバール
初回の講座を経て、会場には少しずつ互いの存在を感じられる空気が生まれてきたCan-Pass plus。
第2回となるこの日は、新たなテーマに向き合うため、静かに集中した雰囲気の中で講座が始まりました。
今回の講座は、「助成金とは何か」がテーマ。初回の事業計画づくりを経て、今回は助成金の本質を理解し、申請書の骨格を描けるようになることを目的とした回です。
今回も支援機関として、山梨県民信用組合さんと、甲斐の国コミュニティ基金設立準備会さんにご参加いただきました。

前回の講座や宿題の過程を通し、よりブラッシュアップされた自身の事業について、改めて考えることからスタートしました。
「1.誰のために」
「2.どんな困りごとを解決するのか」
「3.どうやって解決するのか(ソリューション)」
「4.どうして私がそれを始めるのか/続けるのか」
それぞれの思いや経験を振り返りながら、これらの要素をA4用紙に書き出すワークを行い、自身の事業の輪郭を言葉にしていきました。
書き出した内容については、講座中に支援機関のお2人とオンテンバールの浅野、人権男女参画課から、それぞれの事業の魅力や、気づいた点についてのフィードバックを行いました。
受講生にとっては、自身の経験や想いが第三者の視点でどう受け取られるのかを知る機会となり、事業の軸をわかりやすい言葉にまとめる時間となりました。
講座は、その延長線上として、こうして整理された事業の軸をもとに、「その活動を、どのように社会とつなげ、支えてもらうのか」という視点から、助成金について学んでいく回となりました。

講座では、ソーシャルビジネスにおける資金の考え方について解説がありました。
会費・寄付、自主事業、委託事業、助成金といった複数の資金源をどのように組み合わせ、バランスよく設計していくかが事業の継続性を左右する重要なポイントとなります。
単一の収入源に依存するのではなく、いくつかの柱を持つことで、事業はより安定し、長く続けていくことができます。ソーシャルビジネスだからこそ、想いや活動を支える“お金のあり方”も、戦略的に考えていく必要があることが、改めて共有されました。
助成金を獲得するために最も重要なのは、「お金を出す側は、何に投資したいのか」という視点を持つことです。「自分が大切な100万円を寄付するとしたら、どんな団体を選ぶだろうか」
という問いを通して、助成する側の立場に立つ練習が行われました。
あわせて、生成AIを活用したデモンストレーションも実施され、「私の大事な100万円を寄付したい。どのような団体に寄付するのがよいか?」という問いをAIに投げかけながら、信頼できる団体の条件を言語化していきました。
講師の加藤さんは、
「助成金の要綱には、助成する側が何を解決したいのか、そのためにお金を出す理由が必ず書かれています。助成金は、それを信頼できる団体や個人に託すものです。」と語ります。
助成金は、「楽になるためのお金」ではなく、事業を社会にひらいて試し、土台をつくるための資金。この考え方に触れたことで、受講生の多くが助成金への見方を大きく変えるきっかけになったようでした。


講座の後半では、助成金申請に向けたロジックモデル(事業の骨格づくり)に取り組みました。
助成金を獲得するためには、「課題→解決策→成果」という単純な流れではなく、課題が生まれる背景や原因まで掘り下げた、論理的な構成が求められます。
ワークでは、
・課題の根本的な原因は何か
・その原因に対して、どのような準備が必要か
・具体的にどんな解決策を実行するのか
・一度きりで終わらせず、どう継続につなげていくのか
といった点を整理しながら、事業の流れを組み立てていきました。
講座の初めに書き出した事業計画のメモをもとに、一人の受講生の事業案をモデルとして、生成AIを使ってロジックを組み立てるデモンストレーションも行われました。
AIと対話しながら事業のつながりや因果関係が見えてくるにつれ、会場には「なるほど…!」という納得の空気が広がっていきました。

最後のワークでは、少人数のグループに分かれ、ロジックモデルをさらに磨くワークを行いました。
各自の事業案をもとに、生成AIを活用してロジックの精度を高めたり、自分ひとりでは気づけなかった違和感や抜けを見つけたりしながら、グループ内でシェアしました。
特に、AIに対して
「助成する側の視点で見てほしい」
「このロジックの弱い部分を指摘してほしい」
といった形で問いを投げかけるプロンプトの工夫により、思考を整理し直したり、事業の前提を見直したりするきっかけになったという声が多くあがりました。
AIは“正解を出す存在”として使うのではなく、考えを深めるための壁打ち相手として活用することで、
ひとりでは辿り着けなかった視点に出会える可能性があることを受講生自身が体感しました。

講座の終盤、印象的だったのはこんな言葉でした。
「ここに友達を探しに来るのではなく、仲間を探してください。」
「たとえ事業がうまくいかなくても、最後には大事な仲間が必ず残る。」
ソーシャルビジネスは、一人で完結するものではありません。
行政、金融機関、支援団体、異分野の人たちとの連携を通じて、自分にはない視点や力を借りながら前に進んでいくものです。
最後のチェックアウトでは、「どんな仲間がほしいですか?」という問いが投げかけられ、受講生それぞれが思いを付箋に書き出して講座を終えました。


今回の講座は、「やりたいこと」を語る場ではなく、「なぜその問題が生まれ続けているのか」を深く掘り下げ、社会とつながる形で事業を考える時間となりました。
受講生それぞれが、自分の経験や違和感を社会課題として捉え直し、次の一歩へと踏み出すための確かな土台が築かれたCan-Pass plusでした。
